Japanese
English
特集 脳血管性障害・II
血栓性栓球減少性紫斑病の神経病理学的所見について
Neuropathological Findings of Thrombotic Thrombocytopenic Purpura
猪瀬 正
1
Tadashi Inose
1
1横浜市立大学医学部神経科教室
1Department of Neuropsychiatry, School of Medicine Yokohama University
pp.639-647
発行日 1961年9月25日
Published Date 1961/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903941
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I.まえおき
非常に長い,めずらしい呼び名の問題の疾患は,まれなものであるらしい。たまたま,わたくしが,わが国で最初の1例を報告した1)2),という経緯から,本稿を引受けることになつたが,実は,その後本疾患について,特に勉強したわけではないので,いささか面映い感じがする。
ところで,わたくしは組織病理学的に検索したのであつたが,その臨床観察は,台教授が行つたものである。当初,わたくしは,その病理解剖学的診断には,迷いに迷つた。普通のNissl標本でみると,脳全体の,小動脈と細動脈に,壁細胞の増殖があり,しかも,ところどころに血管のふくれが目立つ(第2図,第3図)。どうも動脈炎のようでもある。しかし,これまで記載されている既知の動脈炎とは,なんとしても一致しない。よくみると,ところどころに出血巣がある。球状の出血巣が,特に多い(第1図,第7図)。この点もなにか妙である。そして,やがて内臓諸器官の標本をみるにおよんで,その例の病理解剖学的変化の根本をつかむことができたのであつた。つまり,小動脈と細動脈の病変ではあるが,脳に限られたものではなく,心や腎,そして消化器にも全く同様の病変がみられたのである。言葉をかえれば,全身の小細動脈と毛細管の疾患であるというべきである。
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