Japanese
English
展望 生化
中枢神経系の神経体液学説
Neurohumoral Theory in the Central Nervous System
吉川 政巳
1
Masami Yoshikawa
1
1東京大学冲中内科
1Internal Medicine, Faculty of Medicine, Univ. of Tokyo
pp.157-162
発行日 1956年1月15日
Published Date 1956/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901490
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神経病学領域における生化単的研究は病理形態学的研究,生理学的研究に比べ立ち遅れている。我々の此の方面の知識は断片的で形態学的研究,生理学的研究の如く体系化されていない。然し個々の報告は最近とみにその数を増しつつあり,基礎的業蹟の多くに将来臨床家に大きな影響を及ぼす可能性が暗示される。私は此の紙面を借り,特定の一つの話題を取あげ,それに関するいくつかの代表的な研究を整理して,多少主観的にはなるが,解説を試みたいと考える。今回は中枢神経系の神経体液学説を,Cholinesterase,Cholineacetylase及びSympathinの分布の面より考察することとしたい。
中枢神経系内の刺戟伝達物質については,従来Acetylcholine(Ach)が専ら重視されて来ていた。そして神経体液学説は交感神経末梢のAdrenaline性神経を除いては末梢より中枢に至るまでAcetylcholineのみを伝達物質として重視して,いわば神経作用を一元的に説明している点に特色があつた。然し最近中枢神経系内の伝達について注目すべき物質としてAch以外にもSympathin,其の他種々の物質が報告され始めた。一方Ach及び之を分解する酵素Cholinesterase(ChE)についての研究が進むにつれ,中枢神経系内のAch代謝は決してすべての部位に均等なものでなく,著明な部位的差異を示すことが明かとなつた。
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