Japanese
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展望 生理
イオンのactive transportについて
Active Transport of Ions
佐藤 昌康
1
Masayasu Sato
1
1熊本大学生理学
1Physiol Department, Univ. of Kumamoto
pp.147-150
発行日 1956年1月15日
Published Date 1956/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901488
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神経の興奮に関するHodgkinなどのNa仮説(Hodgkin,1951;Hodgkin & Huxley,1952)では,神経衝撃の伝導にともないNa+とK+の移動がおこる。すなわち外部からの電圧または隣接部の活動電流によつて神経の膜が脱分極されると,膜はNa+に対し著明にかつ特殊的に透過的になる。外液中のNa+の濃度は細胞内の濃度よりはるかにたかいので,Na+は膜の外側から内側に急に入ってきて最初膜電位を減少させ,最後には膜電位を約50mVも逆転させてしまう。この活動電位の頂点ちかくでNa+の透過性は減少し,一方K+の透過性は著明に増加してくる。ところがK+は細胞内部の方が外液中よりはるかに濃いので,K+は外にむかつてでてゆき,膜電位がもとの値にもどるとともにはじめてK+の移動はやむ。したがって神経衝撃が通過したあとでは線維は興奮前よりも小量のNa+をまし,小量のK+を失つているわけである。(Keynes,1951;Keynes & Lewis,1951)。もし長期間にわたり線維が興奮の伝導をいとなんだとすれば,とりいれたNa+を排出し,失ったK+をとりいれる過程がなければならない。このNa+の排出は物理化学的な濃度勾配に反しておこなわれるわけであるから,これは能動的な分泌過程と考えられ,HodgkinなどによりNaポンプ(sodium pump)とよばれていることは周知のことである。
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