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重症のDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)の原因遺伝子が単離され,その産物がジストロフィンと命名されて以来,筋ジストロフィーの病態解明に関する研究は飛躍的に進歩した。しかし,明らかにされた原因遺伝子産物が,細胞膜に関連した分子であったために,薬物治療ではなく遺伝子治療が期待されている。ただし,巨大なジストロフィン遺伝子(14kb)を大多数の骨格筋線維で安定して長期間発現させることは困難で,遺伝子治療は臨床に応用されていない。一方,最初に治療的アプローチとして試みられた筋芽細胞注入移植では,動物実験では,非常に高い効率でジストロフィンの発現に成功しているが,DMD患者で試みた結果,有効性は明らかではなかった。最近,骨髄に筋細胞系譜の幹細胞を求めることができる可能性が指摘され,再び注目を集めている。薬物治療としては,ステロイド剤が筋ジストロフィーの進行を一時的にせよ抑制することが知られているが,ごく最近,アミノ配糖体が蛋白合成のステップで,終止コドンを抑制する作用を利用して筋ジストロフィーの治療ができる可能性が示された。今後は,筋ジストロフィーの病態解析を土台として,細胞移植治療や薬物治療と遺伝子治療開発研究の連携を深めることにより,いわば分子治療としての研究の取り組みが要請されている。
Since the causative gene of Duchenne muscular dystrophy (the DMD gene) was identified in 1987, research on the molecular pathogenesis of muscular dystrophy has progressed extensively. Now it is widely accepted that the DMD gene product, dystrophin, is involved in stabilization of the membrane structure through binding to dystrophin-associated proteins (DAPs).
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