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Duchenne型筋ジストロフィー
中村 清二
1
Seiji Nakamura
1
1東京大学医学部第一薬理学教室
pp.67-70
発行日 1988年2月15日
Published Date 1988/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905100
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Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は伴性,劣性の遺伝形式を持つ筋変性疾患である。発症率は3,500人の出生男児あたり1人と遺伝性疾患の中でもとくに高く,また発症の30%が突然変異によるという際立った特徴を持っている。多くの場合2〜3歳頃発症し,20歳前後に死亡する。患者はもちろんほとんどの場合男子であるが,例外的に女子が発症する場合もある。その多くはDMD遺伝子の発現が何らかの理由で妨げられたX染色体が全体としては活性を保ち,他方のX染色体が不活化(Lyonization)されていることによると説明されている。病因の解明および治療法の開発は重要課題であるが,それと同時に女性保因者の発見法,患者の出生前診断法の確立もまた急務であった。江橋らにより確立された血清クレアチンキナーゼ濃度測定による診断法は保因者の発見にも有用であったが,確実性の点から見るとそれのみで十分なものではなかった。一方,本疾患が遺伝性疾患であるという原点に立ち返った場合,遺伝学的手法による保因者の発見法が工夫されてしかるべきであった。
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