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大脳皮質で視覚を司っているのは後頭葉の有線領であることは,1890年代にスウェーデンのHenschen(1892)によって見出されたといわれている(図1)。Henschenは片側の有線領の損傷によって,損傷とは対側の視野に盲が生ずることを明らかにした。すなわち,右側の有線領の損傷で左視野のみの盲が生ずる。この盲は左右いずれの眼にも生ずるので左同名性半盲と称される。また,左側有線領の損傷では右視野のみの盲が両眼に生ずる。右同名性半盲である。これが視覚領の発見である。この重要な発見は残念ながらノーベル医学・生理学賞の選にもれた。その理由は当時,ノーベル賞選考委員に神経科学の専門家がいなかったからだといわれている。
Henschenはさらに研究を進め,有線領の上半分は視野の下半分の視覚に対応し,有線領の下半分は視野の上半分の視覚に対応するという説をたてた。また,有線領の後部,すなわち後頭極に近い部分が視野の周辺部分の視覚に対応し,有線領の前部すなわち後頭極から遠い部分が視野の中心部分に対応するという説を立てた。しかし,この結論の後半は正しくなかった。この誤りを正し,有線領の後部は視野の中心部分に対応し,有線領の前部が視野の周辺部分に対応することを明らかにしたのは20世紀初頭の井上達二博士の研究(Inouye,1909)である。
The representation of the visual field was originally studied by S. Henschen (1882). He proposed that the lower visual field is mapped onto the upper bank of the calcarine fissure and that the upper visual field is onto the lower bank. Tatsuji Inouye, a Japanese opthalmologist (1906, 1909) examined Japanese soldiers injured in the Russo-Japanese War and revealed that the central part of the visual field in projected to the back of the striate cortex and the peripheral visual field project at the front. He also showed that a disproportionately large fraction of the striate cortex is devoted to the representation of the center of the visual field than to that of the periphery (cf. Grickstein 1988).
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