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はじめに
イオンチャネルは特定の刺激(膜電位や種々の外来性のアゴニスト)に応じてその開口確率が変化し,特定のイオンを一定量だけ透過させることによって,生体膜における情報変換をコントロールしている。イオンチャネルは細胞における刺激の受容と変換,およびそれに引き続く細胞応答の最終段階としても重要である。それとは逆にチャネル自体も細胞内の種々の因子によりその性質が調節されている。パッチクランプ法によりその機能は単一チャネル分子のレベルで解明され,遣伝子工学の発達により主要なイオンチャネルの一次構造も次々と明らかにされつつある。しかしながら,刺激がいかにしてチャネルの開閉を引き起こすのか,あるいは細胞内情報伝達系がどのようにしてチャネル機能を修飾しているのか,その実体は未だほとんど不明である。例えば,学習・記憶の形成にタンパク質リン酸化反応を介したイオンチャネルタンパク質の修飾が重要であることは分かっていても,実際にチャネルタンパク質がリン酸化されるのか,仮にそうだとしてもリン酸化がどのようにチャネル開閉を修飾するのか,また,リン酸化はどのようにして長時間維持されるのか,といった基本的な問いに答えることができないのが現状である。
特にイオンチャネルの中でも,カリウムチャネルの研究は,(1)ほとんどすべての細胞の機能調節に重要な役割を果たしていること,(2)バラエティーに富んでいるため,カリウムチャネルの開閉機構や修飾の機構の解明はイオンチャネル全般の作動機構の解明につながること,(3)これまでに一次構造の解明が進んだ一部のカリウム・チャネルの結果から,NaチャネルやCaチャネルではよく分かっていなかった機能ドメインの同定が進みつつあることなどの理由によりきわめて重要な研究であると位置づけられている。そのためカリウムチャネルの構造-機能相関と制御機構を解明することは,細胞における新しいタイプの情報伝達とその調節の機構を見いだす可能性を与えるものとして今後大いに研究されるべき対象となるであろう。
It has been suggested that K-channel plays an important role in the cellular response for the various stimulations. According to the result of molecular cloning of the K-channels, the structure of two types of K-channels (Shaker A type and delayed rectifiring type) have been revealed. The re-lationships between the primary structure and its function of Shaker A channel was found to be clear by the site-directed mutagenesis method. Recently, it has been reported that K-channels could be modified by the exogeneously applied agonists, coupled with the second messenger systems, and by arachidonic acid (AA) or AA metabolites. Although molecular mechanisms of K-channel modulation by phosphorylation process via several kinds of kinases were rather apparent, but K-channel modula-tion by AA and /orAA metabolites was still unclear.
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