特集 シナプスをめぐるシグナリング
6.セカンドメッセンジャー
アラキドン酸
魚住 尚紀
1
Naonori Uozumi
1
1慶應義塾大学 医学部 医化学教室
pp.446-447
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101042
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アラキドン酸(20:4,ω-6)は炭素数20の多価不飽和脂肪酸で,5,8,11,14位の炭素に各々二重結合をもつ。アラキドン酸は様々な生理活性脂質の共通の前駆体として重要である。ヒトは生体内でアラキドン酸を完全合成することができず,食事成分からの摂取,食事由来の炭素数18,ω-6系不飽和脂肪酸(リノール酸,γ-リノレン酸など)からの半合成により充足している。ω-3系不飽和脂肪酸も同様,EPA(20:5;炭素数20,二重結合5),DHA(22:6;炭素数22,二重結合5)は必須脂肪酸α-リノレン酸からの代謝と食事からの摂取が必要である。このようにして摂取,合成された多価不飽和脂肪酸は,細胞内ではリン脂質sn-2位にエステル結合した状態(アラキドニルリン脂質)として過半が存在し,生理的に不活性である。生体はアラキドニルリン脂質から生理活性脂質にいたる代謝経路活性の調節によって,アラキドン酸由来の生理活性脂質量を制御する。アラキドン酸はエイコサノイド(プロスタグランジン:PG,ロイコトリエン:LTなど)の前駆体,エンドカンナビノイド(2-アラキドノイルグリセロール:2-AG,アナンダミド:AEAなど)の構成成分,また,それ自体が酵素やイオンチャネルのアロステリック調節分子として機能する。
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