特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅲ.トランスミッターの放出・取り込みに作用する薬物
アラキドン酸
大地 陸男
1
,
立山 充博
1
,
岡田 隆夫
1
Rikuo Ochi
1
,
Michihiro Tateyama
1
,
Takao Okada
1
1順天堂大学医学部第二生理学講座
pp.448-450
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901634
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アラキドン酸arachidonic acid(AA)は炭素数20,二重結合数4の不飽和脂肪酸である。膜を構成するリン脂質にはホスファチジルコリン(PC)やホスファチジルエタノールアミン(PE),ホスファチジルイノシトール(PI)などがあり,ジグリセリドのglycerolの1,2位に脂肪酸がエステル結合している。2位の脂肪酸は不飽和脂肪酸の割合が大きく,AAを多く含んでいる。ホスホリパーゼA2(PLA2)は2位のエステル結合を加水分解し,リゾリン脂質と脂肪酸を遊離する1)。PE,PC,PIやジアシルグリセロールからPLA2によってAAが切り出される。PCにPLA2が作用すると,AAと膜障害性のあるリゾホスファチジルコリンが生ずる(図1)。PLA2の種類は多い2)。リン酸化部位があり,増殖因子のEGF, TGFαなどによりMAPキナーゼが活性化されると,このリン酸化が起こり,PLA2が活性化される。Ca2+は活性化されたPLA2を膜へ移行させ,酵素活性を増強する3)。従って,細胞内のCa2+を増大させる多様な刺激が,AAの関連した調節をもたらし,Ca2+の動態に関連する薬物がこれを修飾する。AA自体にはK+チャネル活性化4)やホスファターゼを活性化してL型Ca2+電流抑制をもたらす作用がある。AA分子は不飽和結合により屈曲しているので,一般に膜の流動性を増す作用がある。
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