連載 人間はいつから病気になったのか—こころとからだの思想史[5]
「痛み」は誰のものか?
橋本 一径
1
1早稲田大学文学学術院
pp.162-166
発行日 2017年2月15日
Published Date 2017/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200179
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プラセボ効果
子どもの頃、眠れなくなってしまった私に、母はよく「眠り薬」だと言ってビタミン剤を「処方」してくれた。その薬は多くの場合とてもよく効いて、私はすぐに眠りにつくことができた。いわゆる「プラセボ(偽薬)効果」である。
20世紀の初頭に、同様の「プラセボ効果」を患者に対して試みているのは、フランスの神経科医イポリット・ベルネーム(Hippolyte Bernheim, 1837-1919)である。彼は当時新薬だったスルホナールの催眠効果を確かめるために、以下のような実験を行なう。
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