Feature Topic がん免疫療法時代の航海図
これから先の航海指針—免疫療法の2年後を先取りする
—論考—がん免疫研究のCutting Edge—Neoantigen in cancer immunotherapy
松下 博和
1
1東京大学医学部附属病院免疫細胞治療学講座
pp.482-487
発行日 2016年10月15日
Published Date 2016/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200118
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がんの発生とneoantigen
がん細胞はそのがん化の過程で多くの体細胞遺伝子変異を蓄積していく。変異由来の蛋白は、生体内に元々存在しない非自己の成分であることから、宿主免疫系のよい標的抗原となり得る。そのような変異由来の抗原はneoantigen(ネオアンチゲン、新生抗原)と呼ばれている。
がんの発生初期段階では、変異が蓄積されると同時に、そのなかで免疫原性の高いネオアンチゲンを発現したがん細胞は、免疫系により排除される可能性がある。いわゆるがんの免疫監視である。しかし、排除されずに残ったがん細胞と免疫系との平衡状態が続いた後、どこかの時点で、がん細胞が免疫系の攻撃から逃れるような形質を獲得したり、また、免疫系を抑制したりするような環境を作り出したとき、腫瘍は増大しはじめ、最終的には我々が臨床的に目にするがんに発展する。この過程はがんの免疫編集機構(排除相、平衡相、逃避相の三つの相からなる)という仮説で説明されているⅰ。
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