【臨床小説—第二部】後悔しない医者|今と未来をつなぐもの・第31話
よくならない患者を診る医者
國松 淳和
1
1医療法人社団永生会 南多摩病院 総合内科・膠原病内科
pp.1401-1406
発行日 2022年11月15日
Published Date 2022/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204055
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前回までのあらすじ 今月のナゾ
向後チーム定例のカンファでは、左座が気になっている外来症例のプレゼンが続いていた。患者は16歳・男性、頭ケ島白浜病院がある五島の出身だ。この春、長崎市内の県下有数の進学校に入学し、下宿生活を送っていた。強豪のバスケ部にも入ったが、体育会系の雰囲気には馴染めずにいた。そして4月下旬から、体がだるくて朝起きられなくなった。頭痛もひどく、下宿の大家である「おばあちゃん」に見守られながらも、学校に行けなくなってしまった。市内の総合病院で精査を行ったが異常は認められず、左座の診療も行き詰まりつつあった。
いくら検査をしても異常がない。心因性ではないか——。「不定愁訴」あるいは「MUS(medically unexplained symptoms)」を訴える患者がいる。患者にとって症状は確かにあるのだが、器質的疾患がないか精査し、機能性の病態も疑ったうえで、その症状に説明ができない場合、他になすすべはないのだろうか? 左座は、そして向後は、この患者にどう向き合っていくのだろう?
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