特異な発育形態を示した粘液産生性肝内胆管癌の1例

A Case of Intrahepatic Cholangiocarcinoma Presenting Hypersecretion of Mucin and Unusual Growth Pattern

　患者は78歳，男性．糖尿病にて近医通院中，超音波検査にて肝内胆管の拡張を指摘され本院紹介入院となった．血液生化学的検査には異常はなかった．腹部超音波検査では，肝S₃に径3cmの低エコー腫瘤を認め，末梢胆管の拡張を認めた．造影CTでもlow density massと胆管の拡張を認めた．ERCでは，B3に腫瘍による途絶を認め，肝内胆管癌と診断した．腹部血管造影では，A3分枝にencasementと，経動脈的門脈造影でP3に途絶を認めたため，肝実質浸潤および門脈浸潤を疑った．肝左葉切除術を施行した．病理所見は，B3に乳頭状の腫瘤を認め，胆管発育型の肝内胆管癌と診断された．また，末梢胆管には，粘液が多量に充満していた．グリソン鞘内と門脈内に粘液と癌細胞を認めた．胆管壁と門脈壁には癌の直接浸潤部はなく，粘液がそれぞれの管腔内に穿破し，粘液とともに癌細胞が流入しグリソン鞘内や門脈内に進展したものと推測された．