私の意見
TAEの有効性について―欧州におけるrandomized trial
松井 修
1
1金沢大学病院放射線科
pp.601-602
発行日 1999年7月15日
Published Date 1999/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1427900089
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最近肝癌に対するTAEの有効性を否定する論文が欧州を中心に相次いで発表され話題となっている.いわゆるrandomized studyで,科学的な正しさからこれまでのわが国におけるTAEのあり方に疑問を投げかける論文であり,TAEの効果の再検証を訴える論調が目立っている.連日多くの肝癌に対しTAEを行っている立場から私見を述べてみたい.
Randomized trialが臨床的な有効性を証明する最も有効かつ必須の方法であることに異論はない.新しい治療法を導入する際には今後必須となろう.しかしながら過去においては日本のみならず欧米でも必ずしも行われてはこなかった.多くはhistorical studyであり,過去の異なった方法との成績で評価され導入されてきた.無論randomized studyに比べれば科学的ではない.しかしながら,実際には臨床の現場で評価され,効果のないものは自然に淘汰され消滅してきた.日本ではTAEの治療成績はマイクロカテーテルによる亜区域塞栓術の導入後その有効性を示す報告が多数みられ,また臨床の現場ではますます積極的に施行されている.わが国でrandomized studyなどのTAE療法に対する再検証の必要性を主張する論調がみられなかったのは臨床の現場でその抗腫瘍効果が強く実感されてきたからであろう.
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