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はじめに
わが国においてはウイルス性肝炎,肝硬変に伴って肝細胞癌が発生することが多い.そのため,硬変肝に検出される結節の多くが肝細胞癌といっても過言ではない.1980年代頃よりリアルタイムBモードスキャンが開発され,小さな結節性病変が肝内に多数検出されるようになってきた.それに伴い,大きな問題となってきたのは超音波では検出されるけれども,血管造影で典型的な濃染を示さない結節の存在であった.当時は,超音波ガイド下生検を行って病理組織診断を行っても典型的な肝細胞ではなく,再生結節もしくは過形成結節(いわゆる腺腫様過形成)と診断されることが非常に多かった.このような結節は肝発癌過程の中でどのような段階の結節なのか,あるいはどのように治療すべきかということが当時大きな問題となってきた.この点は実は現時点においてもクリアカットな結論は出ているとは言い難い.しかしながら,病理学的診断基準の確立,前癌病変・早期病変の自然経過の理解,画像と病理の詳細な対比の集積,などから現在では20年前とは比べものにならないくらいに早期肝細胞癌の実態が画像でも捉えられるようになってきた.肝硬変に伴う結節性病変の中には,病理学的には前癌病変である腺腫様過形成(low-grade dysplastic nodule:LGDN),異型腺腫様過形成(high-grade dysplastic nodule:HGDN),境界病変,早期肝癌(HGDNの一部はこれに含まれる),あるいはnodule-in-noduleタイプの肝癌などさまざまな結節が混在してくる.これらを画像的にどのように鑑別していくかについては本特集号に詳しく述べられているので割愛する.本稿ではこのような画像診断で典型的な肝細胞癌ではない前癌病変,初期病変の現時点での画像診断の現状と限界を示すとともに今後の展望について概説し序文としたい.
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