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あとがき
虫明 元
pp.398
発行日 2021年4月1日
Published Date 2021/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201775
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今月の特集の「片頭痛・群発頭痛治療の新たな夜明け」は,治療に焦点を絞りつつ,その原因となる神経機構に関しても理解が進んでいることを実感した。具体的には脳血管の拡張・収縮に関わる多様な神経ペプチドの理解,画像解析などからの大脳皮質〜脳幹の片頭痛の各ステージでの詳細な解析,神経モデュレーション法の効果が及ぶ神経基盤の理解など,治療法を紹介しながらも新しい病態理解の道が示されている。
一方で,システム生理学的な立場として,このような複雑な病態の起こるメカニズムはどのようになっているのかが知りたいと思った。生理学ではホメオスタシスというメカニズムがあり,身体内外の環境からの外乱・ストレスに対して,内部環境を保持する機構が知られている。脳の場合は,神経活動,代謝,血流が絶妙に調整され,必要な部位に必要なものが届けられ,一定環境を守るように調節されている。一方でホメオスタシスを構成するどこかの感受性が,繰り返されるストレスに対して,次第に変化をして動的に適応することも知られている。しかし,その適応の仕方には個人個人の感受性の違いがあり,レジリエンスより脆弱性が表に出るとき,適応は望ましくない方向に振れる場合があることが知られている。
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