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あとがき
虫明 元
pp.1178
発行日 2021年10月1日
Published Date 2021/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201912
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本号は特集「中枢神経・末梢神経の悪性リンパ腫」ということで,基礎の神経科学者としては,臨床研究の最前線を読む貴重な機会であった。筆者の若い頃は中枢神経にはリンパ系はないとのことで,リンパ系の疾患は神経系には縁遠い感じがしていた。しかし2013年にロチェスター大学のネーデルガードらが,脳のリンパ管系をグリンパティック系として命名して以来,脳にもリンパ系があり,大切な役割を担っていることが明らかになりつつある。
リンパ管系は,2つの役割が知られている。すなわち,①毛細血管から漏出した間質液を回収してリンパとして運び,静脈に戻すクリアランス系としての役割,②異物を認識し活性化した免疫細胞や抗原を末梢組織からリンパ節へ輸送し,免疫を開始させる役割の2つである。脳の中の老廃物,例えばアルツハイマー病におけるアミロイドβなどの老廃物は,グリンパティック系が脳外に排出して掃除してくれれば,異常な蓄積を防げるのではないかと期待されている。一方でこの系の働きが低下すれば老廃物が急激に増加することになるわけである。
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