--------------------
あとがき
虫明 元
pp.660
発行日 2020年6月1日
Published Date 2020/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201580
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本号の特集は「前頭側頭葉変性症の今日的理解」ということで,大変興味深く読ませていただいた。脳の変性症というとアルツハイマー型認知症がよく知られている。またレヴィ小体型認知症も次第によく知られるようになってきた。それらに比べると今回特集されている前頭側頭葉変性症は専門家でもわかりにくい印象がある。特集してまとめることで,この分野の勉強にもなり,理解が進み大変ありがたいと思われた。脳の変性症はどのタイプも基本的にはネットワーク病であり,脳の1つの領域ではなく,ネットワークとして障害を受けるため,1つの領域の機能と障害だけでは理解できない難しさがあることが各論からはよくわかる。このような難しさは実は脳に関しては本質的な問題と思われる。
脳研究のこれまでの膨大な成果からも,脳の働きを理解する際に大きな問題となるのは,部分と全体の課題である。すなわち脳のある領域としての働きは,その領域を含む他の領域とのネットワークの総和として働き,さらには人としての社会の中での働きの理解と段階的に進められると思われる。一方で,部分としての特定の脳部位の理解とそのような脳の部分の総和としての働きが,人としての全体の働きと等価ではないのではないかというのが部分と全体の問題の本質である。
Copyright © 2020, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.