--------------------
あとがき
虫明 元
pp.794
発行日 2024年6月1日
Published Date 2024/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416202682
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
注意に関する特集号で,さまざまな注意の神経機構や病態が議論されています。しかし,私は逆に,注意の反対,つまりぼんやりした状態について書いてみたいと思います。本特集の中でも少し触れられていますが,脳は休んでいるように見えるときでも,実際には活発に働いていることがわかっています。このような安静時にも活発に活動している領域は,デフォルト・モード・ネットワークと呼ばれ,計算などの認知作業時には休んでいる一方,休憩しているときに活発になることが特徴です。例えば,試験中など外部の刺激に注意を向けているときには,このネットワークの活動が低下します。しかし,外部の課題から解放されると,このネットワークは再び活発になります。つまり,このネットワークは,活動する領域と休む領域が交互に切り替わるような働きをします。
しかし,このぼんやりとした状態でも,その内容は重要です。ぼんやりとした状態は英語で“マインドワンダリング”と呼ばれ,心がさまざまな方向に飛び回る状態を指します。しかし,心の中のさまざまな考えや感情はコントロールが難しいことがあります。実際,マインドワンダリングの発生頻度や持続時間をモニタリングし,そのときの気持ちも調査した研究があります。その結果,マインドワンダリングが多い人ほど,不安や不満などのネガティブな感情と関連していることが示されました。
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.