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特集 神経疾患のドラッグ・リポジショニング—新時代へ
序
Drug Repositioning for Neurological Disorders: Preface
桑原 聡
1
Satoshi Kuwabara
1
1千葉大学大学院医学研究院脳神経内科学
1Department of Neurology, Graduate School of Medicine, Chiba University
pp.935
発行日 2019年9月1日
Published Date 2019/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201384
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- Abstract 文献概要
医学研究の最終目標は治療であり,有効性の高い新規治療薬剤を開発し,それを実臨床において患者に届けることであることは言うまでもない。しかし臨床医が治療薬の開発に関わることのできる道筋は意外に限られている。新規化合物を治療薬剤としてヒトに対して初めて使用するには(first-in-humanと称される),化合物を合成・抽出し,安全性・薬物動態を長期の動物実験(前臨床試験)で確認してから,初めて第Ⅰ相安全性臨床試験に至るが,これらをアカデミアで行うことは不可能である。ドラッグ・リポジショニングとは既に他疾患に対して市販されている既存承認薬を新たな疾患に応用する研究手法であり,これにより上記の開発早期相をスキップして第Ⅱ相(探索)試験,第Ⅲ相(検証)試験へ進むことができ,アカデミアによる新規治療開発の道が開けることになる。
もうひとつの大きな変化は2004年の薬事法(現在の薬機法)の改正である。新規治療薬の承認は薬機法(正式名称は「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」)に基づいて行われる。薬機法による承認を得るために行う臨床試験を「治験」と称するが,治験の実施主体は2004年までは製造販売を行う製薬企業に限られていた。製薬企業は経済的理由からまずは患者数の多い疾患を対象として開発を目指すため,本邦においては希少疾患に対する治験がほとんど進まなかったのが現実である。この2004年の法改定により医師自らが治験を行うことが認められることになり(医師主導治験),ようやくアカデミアによる新薬開発が可能となった。
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