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アレルギー性鼻炎に代表される即時型アレルギー反応がIgE抗体によることが解明されたのは1967年のことである。石坂公成,照子両先生の「レアギン活性担体としてのIgE抗体」の業績は燦然として輝いている。この後約40年間,臨床アレルギー学の進歩は基礎科学としての免疫学と不即不離の関係にあった。病態について新しい知見が報告されるごとに,臨床のターゲットは細胞面では抗体産生細胞,肥満細胞,好酸球,Tリンパ球へと移動している。また,化学伝達物質についてもヒスタミン,ロイコトリエンやプロスタグランジンへと拡大されている。しかしこれらの傾向も決して一定ではない。新技術の導入によって抗体産生やT細胞を標的としたワクチン療法が開発途上であるし,第3世代の抗ヒスタミン薬についての合意形成も進んでいる。研究のハイライトは螺旋を描きながら上昇し,治療に反映されつつあるが,根治の目途はまだ見えていない。
一方で,感染症や癌と異なり,アレルギー疾患は基本的に「生活の質」を損う病気であり,診断や治療に患者の主観が反映されることが多い。また,アレルギー疾患増加のメカニズムも十分に解明されたわけではない。診療面では耳鼻咽喉科や眼科専門医が必ずしも臨床アレルギー学に精通しているとは限らない。逆もまたしかりである。専門性と専門科横断的病態をもつアレルギー研究の並立はなかなか難しいものであるが,アレルギー疾患が表現される標的器官としての上気道は主に耳鼻咽喉科医が担当する分野である。加えてアレルギー疾患と言っても,本特集で取り上げたアレルギー性鼻炎のⅠ型以外にⅢ型やⅣ型によるものもある。上気道ではこれら他のアレルギー機序による疾患も忘れてはならない。また,この分野の臨床研究が国際化しており,強くエビデンスが求められていることも強調しておかねばならない。
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