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あとがき
神田 隆
pp.970
発行日 2017年8月1日
Published Date 2017/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416200854
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もう30年近く前になります。私が東京都立神経病院神経内科に奉職していたとき,週に1回の院内症例検討会に,あまりみたことのない症候を示す(詳細はすっかり忘れました)遺伝性の脊髄小脳失調症患者が提示されたことがありました。原因遺伝子などはもちろん何もわかっていない時代のこと,症候学と画像所見が数少ない鑑別診断の手がかりです。Marie病という言葉は当時も既に死語になっていたように記憶していますが,Menzel型,Holmes型,Boller-Segarra型,はたまた当時ホットな話題になっていたJoseph病といった言葉が参加者の間で飛び交っていました。
症例検討会が閉じられるにあたって,当時病院長を務めておられた椿 忠雄先生に「この患者はどのように分類されるか」という質問が投げかけられました。当時駆け出しだった私には,椿先生は経験豊かな神経学の神様みたいな存在で,「この症候から考えて,こういうグループに属するのではないかと私は考える」というような締めの言葉を待ち構えていたのですが,意外にも椿先生の回答は,「そんなことをやってどういう意味があるんですか」というものでした。真っ向勝負の直球が来るかと待っていたところへ,ど真ん中のスローカーブで三振を食らったような気分になったのを思い出します。
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