学会印象記
6th Pan-Asian Committee on Treatment and Research in Multiple Sclerosis (PACTRIMS)(2013年11月6~8日,京都)
中島 一郎
1
1東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経内科学分野
pp.192-193
発行日 2014年2月1日
Published Date 2014/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101723
- 有料閲覧
- 文献概要
多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は,10~40代の比較的若年層に好発する中枢神経の炎症性疾患で,自己免疫的機序による脱髄が病態の中心と考えられているものの,詳細な病因はまったくわかっていません。MS罹患者は全世界で250万人程度存在するといわれており,片頭痛を除けば,若年成人における後天的な中枢神経疾患としては最も頻度の高い疾患の1つであるといえます。従来アジアにおけるMSの発症頻度は欧米に比べると低く,有病率は1/10以下です。しかも,MSとの鑑別が重要な疾患である視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)の割合や非典型的なMSの割合がアジアでは多く,欧米における診断基準や治療方針がアジアでは通用しないことが以前から指摘されていました。
こうした背景から,アジア地域におけるMS研究の発展を目的とし,バイエル社の協賛で2003年にタイのバンコクで第1回のPan-Asian MS Forum conference(PACTRIMSの前身)が開催されました。中東を含むアジア,オセアニア地域から約100名の専門家が集結しそれぞれの地域における実情を中心に話し合われました。その後,このMS Forumは2007年まで毎年開催され,この地域のMSおよびNMO研究の発展に大いに貢献してきました。その後,2007年にMS Forumで会長を務めていた斎田孝彦先生が中心になって学会としてのPACTRIMSが発足し,第1回の会合が2008年にクアラルンプールで複数の製薬メーカーの協賛によって開催されました。
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.