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あとがき
岩田 誠
pp.190
発行日 2011年2月1日
Published Date 2011/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100850
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本号では,日本人の発見した神経疾患の第2弾を特集した。この中の4つの疾患は,日本人の名前がついた,いわゆる冠名疾患である。疾患や症候群,あるいは徴候に発見者の名前を残す風習は,なにも医学の分野だけのものではない。ピタゴラスの定理,アヴォガドロ数,ボイルの法則,パウリの禁律など,数学や物理化学の世界では,昔から科学者の名前を冠する原理・原則が多いし,パスカル,ヴォルタ,アムペール,ワット,オーム,ヘルツ,キュリー,テスラなどの名前は物理現象の単位の名称にまでなっている。それらの名前が,日常生活の中であまりにも当たり前に使用されていると,次第にその名前の本人が一体どのような人だったのかが忘れ去られていってしまうし,それどころか,それが人名に由来するものであったことすら忘れ去られてしまう。「台風14号は,中心気圧940ヘクトパスカルの強い勢力を保ちつつ北上中」とか,「東京の家庭電源は100ヴォルト,50ヘルツ」とか聞いても,そこにパスカル,ヴォルタ,ヘルツの名前を読み取ったり,あるいはそれらの先駆的科学者への賞賛の念を感じ取る人はほとんどいないのではないかと思われる。
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