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あとがき
梶 龍兒
pp.200
発行日 2010年2月1日
Published Date 2010/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100640
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高齢者医療・介護費の急増が国家予算をひっ迫させている。血栓溶解療法などの発達によって脳卒中は死因の3位に後退したが,これは卒中になっても単に死ななくなったためであり卒中患者そのものが減ったわけではない。特に脳卒中後遺症に悩む患者はわが国では現在推計約160万人とされ,脱力や痙縮,高次脳機能障害などで他者の介助を常に要する人々の年間の介護費用だけで2兆円,脳血管障害全体の医療費がこれとは別に3~4兆円かかっている。その年間の総費用は最近マスコミをにぎわした“事業仕分け”による節約分の数倍にも及ぶ。しかも卒中患者は過去10年間で倍増しており,これから10年後にはさらに費用も倍増しているかもしれない。他の高齢者に多い神経疾患であるAlzheimer病による社会的損失を加えるとわが国はこれら高齢者の神経疾患だけで財政破たんする可能性すらある。
わが国でのリハビリテーション医学は,米国のそれとは異なった発展を遂げている。整形外科を中心とした外傷の治療の一環として始まり,その後米国でトレーニングを受けたリハビリテーション科の医師が専門とするようになった。米国では,physiatristと呼ばれるリハビリテーション専門医とともに,神経内科医を中心としたneurorehabilitationが発達している。後者は神経科学をベースとした科学的なアプローチが強調され,経験的な側面が強い従来のリハビリテーションとは一線を画している。
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