- 有料閲覧
- 文献概要
別にHyperostosis frontalis inte—rna (H.F.I.)とも呼ぶが,1765年,イタリアの外科,解剖,病理学者であるMorgagni,J.B.が多毛性男性化と肥満を伴つた75歳の女性で,この頭蓋骨変化を解剖で認めたのにはじまるとされている。しかし,彼はこの3点を単なる合併と考えたにすぎないということで,これらが一群として問題視されるようになつたのは一世紀半余もすぎてからである。Stewart (米,1928)はH.F.I.が老人にしばしばみられ,かつ肥胖を伴い,ほとんど女性に限られることを認め,脳下垂体障害を想定した。これを臨床的ならびに病理解剖学的に一体としてはじめてまとめたのはMorel,F.(スイス)で,その翌1929年のことであつた。Morelによれば,H.F.I.は前頭骨の内側に対称的にあつて,限局し,頭蓋骨外板や,頭蓋底には変化なく,肥胖症は対称的で,体の中央部に強く,脳症状をもつているという。男性化はしばしばみられるが,不定で本質的な症状としなかつた。Heuschen (1936)はこれに男性化を加え,かつ,はじめてMorgagni症候群という名を用いた。しかし,その分類はやや妙で,H.F.I.に肥胖症と神経精神症状を伴うものをStewart-Morel症候群といい,H.F.I.に男性化と肥胖症を有するものをMorgagni症候群と称した。これらをMorgagni-Morel症候群の名のもとに合一したのはCa—lame,A.(仏,1950)であつた。かくして,本症はMorgagni,Morga—gni-Morel,Morgagni-Stewart-Mo—rel,などのeponymを以つて呼称されている。単にH.F.I.という名称は本症の一部分症状を示すのみで全体像を示してはいない。
Morgagni-Morel症候群の臨床的特徴は①レントゲン学的にHyper—ostosis frontalis interna,①肥膵症,③男性化(多毛症),の3主徴とされたものの他に,④神経精神症状(頭痛,てんかん発作,平衡障害,睡眠障害,情緒性格変化,知能低下),⑤糖代謝異常(糖尿夢丙,多飲,多食を含む)があげられる。女性に圧倒的に多いこと(88%〜99%)は,いくつもの報告が示すところであるが,その年齢分布は古く信じられていたように高齢者とは限らず,女性としてのほとんどすべての年代にわたるとされている。
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.