Perspective◆展望
生きるということと慢性炎症
内潟 安子
1
1東京女子医科大学東医療センター
pp.819
発行日 2017年10月15日
Published Date 2017/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415200767
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20〜30年前から,糖尿病の病態を,インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の2つの面から考えることが一般的となってきました.インスリン分泌が十分でないと血糖が高くなるという考えは学生に理解しやすいように容易に説明することができるのですが,インスリンの分泌機構には障害なく血中に十分量のインスリンが存在するにもかかわらず,標的とする臓器細胞においてインスリンが正常に働かなくなった状態であるインスリン抵抗性という概念は,種々のメカニズムで引き起こされるためインスリン分泌不全という概念ほど簡単にすきっと理解できるほどに説明することができないなと,学生の顔を見つつ常々感じていました.
昨今は,多くの臓器が血糖調節に働いていることがわかってきて,少なくとも7つの臓器(膵臓β細胞,膵臓α細胞,筋肉,脂肪組織,脳,腸,腎臓)が血糖を正常域に保持するという機能が不全となって糖尿病を発症させると考えるのが適切であろうとなってきました.実際,それぞれの臓器に作用する薬物が開発され,治療薬として効力を発揮し,日々の治療薬として臨床の場で役立ちつつあります.
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