糖尿病診療マスター 15巻10号 (2017年10月)

特集 臓器炎症からみた糖尿病および糖尿病性合併症

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POINT

・動物性脂肪の過剰摂取は脳の中でも特に視床下部の小胞体ストレスを高め,動物性脂肪依存を生じる一因となる.

・視床下部の炎症は運動習慣によって改善する.

・食習慣の乱れや運動不足によって,脳の中でも特に視床下部に炎症が起こりやすい.

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POINT

・マクロファージは肥満脂肪組織の炎症顕在化に重要な役割を果たす.

・脂肪組織リモデリングは異所性脂肪蓄積をきたし臓器不全・代謝異常を呈する.

・全身的代謝の恒常性維持には脂肪組織のhealthy expansionが重要である.

膵島炎と糖尿病 佐野 寛行 , 今川 彰久
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POINT

・自己免疫性1型糖尿病は膵β細胞に対する獲得免疫,劇症1型糖尿病は膵島に生じる自然免疫が膵島炎の主病態と推察される.

・免疫チェックポイント阻害薬の使用により1型糖尿病を発症することがある.

・2型糖尿病において,インフラマソームの活性化を起点とする膵島炎(自己炎症)が認められる.

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POINT

・アテローム性動脈硬化症は単球・マクロファージを中心とした血管の慢性炎症である.

・インクレチン関連薬は抗炎症作用をもつ.

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POINT

・糖尿病網膜症の危険因子として高血糖,高血圧,脂質異常,喫煙,妊娠などが古くから指摘されており,これらの危険因子を軽減することが重要である.

・生活習慣病により老化が加速する進行過程では,複数の病態に慢性炎症と循環・組織レニン-アンジオテンシン系が関与する.

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POINT

・慢性炎症は糖尿病腎症の発症・進展に関与している.

・近年,慢性炎症のメカニズムにToll-like receptor(TLR)やインフラマソームの関与が示唆されている.

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POINT

・糖尿病性多発神経障害における慢性炎症の意義は未確立である.

・全身の慢性炎症と糖尿病性多発神経障害の有病率には相関がある.

歯周病と慢性炎症 西村 英紀
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POINT

・歯周病はグラム陰性嫌気性菌の感染で惹起される感染症であり,自覚症状に乏しいため未治療のまま放置され,慢性化しやすい.

・こうして放置されると,局所のみでなく生体に軽微な慢性炎症が惹起される.特に脂肪組織の炎症を助長すると考えられる.

・歯周病による軽微な慢性炎症は耐糖能に影響を及ぼす.よって的確な炎症のコントロールが重要である.

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POINT

・2型糖尿病と脂肪肝は共通の病態を有し,相互に病態を進行させる.

・脂肪酸やその代謝産物は自然免疫を過剰に活性化し,慢性炎症に至る.

Perspective◆展望

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 20〜30年前から,糖尿病の病態を,インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の2つの面から考えることが一般的となってきました.インスリン分泌が十分でないと血糖が高くなるという考えは学生に理解しやすいように容易に説明することができるのですが,インスリンの分泌機構には障害なく血中に十分量のインスリンが存在するにもかかわらず,標的とする臓器細胞においてインスリンが正常に働かなくなった状態であるインスリン抵抗性という概念は,種々のメカニズムで引き起こされるためインスリン分泌不全という概念ほど簡単にすきっと理解できるほどに説明することができないなと,学生の顔を見つつ常々感じていました.

 昨今は,多くの臓器が血糖調節に働いていることがわかってきて,少なくとも7つの臓器(膵臓β細胞,膵臓α細胞,筋肉,脂肪組織,脳,腸,腎臓)が血糖を正常域に保持するという機能が不全となって糖尿病を発症させると考えるのが適切であろうとなってきました.実際,それぞれの臓器に作用する薬物が開発され,治療薬として効力を発揮し,日々の治療薬として臨床の場で役立ちつつあります.

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 “医療”をどう定義したらよいか…….医学と医療の関係を重要なテーマとして考えておりましたところ,村上先生の『医学と医療の間』という講演論文1)にたどり着きました.これだけクリアに医学と医療というもの,およびその間に関して書かれたものにこれまで出会わなかったので,どうしても先生にお話をお伺いしたいと思い,対談の機会を設けさせていただきました.(石井 均)

糖尿病患者の口腔健康管理 はじめの一歩・10

データを診療に活かす 髙野 直久
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歯肉にできもの

 歯周病は基本的には慢性炎症の経過を辿りますが,前回のように急性炎症に転化し,膿瘍を形成することもあります.図1aは慢性炎症の末に,歯肉にできものができたケースです.これは,歯肉に生じたフィステル(瘻孔)が少し盛り上がったものであり,かつ口腔内なので内歯瘻ということになります.外歯瘻は図1bのように顔面皮膚に生じます.両方のフィステルは,どちらかというと女性に多く形成されます.女性は治癒力も旺盛であるためか,男性よりも歯性の炎症の場合では慢性化して,フィステルを形成しながらも歯牙支持組織により脱落を免れ,局所においては,慢性炎症が小康状態であることが経験的に感じるところであります.

 ここで,NDBデータ(平成26年4月から平成27年3月)から示されている傷病名の統計データから,歯根囊胞,外歯瘻,内歯瘻について見てみます.まず,歯根囊胞の算定数の性差は,図2ように女性のほうが56:44と多く算定されています.外歯瘻の算定数の性差は,図3のように女性が57:43と多く算定されています.また,内歯瘻算定数の性差は,図4のように女性が51:49とやや多いものの,性差は小さいようであります.これは,内歯瘻が外歯瘻より診療において算定するのが少ない可能性があることによると思われます.そこで,内歯瘻では,内歯瘻算定数が内歯瘻発生を正確には反映していないように考えられるので注意が必要と思われます.

糖尿病に効くコーチング 明日から始めてみませんか?・10

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 患者さんにインスリン治療をお勧めして,「インスリンはもう少し待ってください」と言われる場面がよくあります.その際に医療者の「この血糖値だと大変なことになりますよ!」「インスリンの針はとても細いので痛みも少ないですよ」といったアドバイスが始まりますが,患者さんは「インスリンをしなきゃいけないのもわかっています,でもね〜」という思いで,結局は「インスリンをやりましょう」「もう少し待ってください」という会話が外来で繰り返されます.

 患者さんがインスリンに対して不安に思うのは自然なことです.そして「できない」「やらない」という言葉の裏には必ずその患者さんの「事情」があります.しかし,患者さん自身もその事情が頭の中ではっきりしていないことが多くあります.人は質問されて初めて考え,言葉に話してみて初めて気づきます.ですから患者さんの頭の中にある「インスリンに踏み込めない事情」を医療者がいかに引き出せるかが重要です.

糖尿病診療トレーニング問題集

内科医レベル 光冨 公彦
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症例 80歳,女性.

現病歴 70歳頃より,高血圧,糖尿病にて近医にて加療中であった.79歳時にレビー小体型認知症と診断された.

内科医レベル 清水 貴美
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症例 55歳,女性.

主訴 口渇,多飲,多尿,全身倦怠感.

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 Sodium-glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬は近位尿細管でブドウ糖再吸収を抑制し血糖値を低下させます.同時に全身の代謝状態が,ブドウ糖の出納やホルモンの反応,エネルギー消費なども含めて順応し変化すると考えられます.著者らは2型糖尿病患者でエンパグリフロジンが尿糖を増加させた時の生理的反応を報告しています.二重トレーサーテクニックや間接カロリーメトリーを使ってエンパグリフロジン急性,慢性投与により,内因性糖産生が増加し,組織での糖利用が減少し,脂質利用が増加しました.そしてSGLT2阻害薬による脂質利用や酸化的利用は血漿ケトン〔βヒドロキシブチレート(βHB)〕レベルの増加と血漿乳酸濃度の低下と相関していました.SGLT2阻害薬投与時のケトン血漿での腎クリアランスは不明でした.昔の研究では,ケトンの腎ハンドリングには飽和と不飽和コンポーネントの存在が示されていました.濾過された少量のケトンは完全に吸収され,さらに血中ケトンレベルが上昇するとケトン尿が生じます.S2セグメントの尿細管細胞管腔面では,多重選択制有機アニオン輸送体がケトンを血漿から細胞質へ移動させます.一方,多重薬剤抵抗性のアニオン輸送体はケトンの細胞質から近位尿細管管腔への移動に影響を及ぼします.これらの過程の詳細なメカニズムはわかっていません.そこで本研究では,エンパグリフロジン投与前後の空腹時と食後のブドウ糖,βヒドロキシ酪酸,乳酸,ナトリウムの尿中排泄を検討しました.

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糖尿病診療マスター
15巻10号 (2017年10月)
電子版ISSN:1347-8389 印刷版ISSN:1347-8176 医学書院

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