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はじめに
高齢社会が急速に進んでいるわが国では,国民の健康志向が強まる中,健康食品やサプリメントへの関心が強まっている.インターネットやテレビ,新聞,雑誌,チラシ,通信・訪問販売,クチコミなどにより,これらの様々な情報が真贋取り混ぜて飛びかい,コマーシャルが氾濫している.中国や韓国,シンガポールなど旅行業者のツアーでは,健康食品店に立ち寄り,ツアー客達は白衣を着たスタッフから講義(?)を受けた後,糖尿病や便秘,肥満,美肌…に効くと信じて1瓶数万円もの健康食品を,先を争って購入している.
筆者らが健康食品に注目し始めたのは,約30年前,健康食品にのめり込み,受診中断半年後,ケトアシドーシス状態で緊急入院した糖尿病患者を経験したことがきっかけである.身長148cmの小柄な47歳女性.当院で血糖コントロール不良のためインスリン治療を開始したが,近医に自己転医後,経口血糖降下薬に切り換えられた.次第に体重減少,倦怠感が甚だしくなり,自己転医を繰り返した末,糖尿病を治したい一心で,タラの木の根,数種類の漢方薬,裏白樫の葉,さらに生のブタ膵の飲用まで試みていた.半年ぶりに当院を再受診した時,口渇,多飲,多尿,全身倦怠感を強く訴え,体重は12kg減り,尿ケトン体強陽性,空腹時血糖225mg/dL,HbA1c(JDS値)14.0%とコントロール不良で,ただちにインスリン治療を再開し,ほどなく回復した.
生のブタ膵は,市内のハム工場主が,インスリン注射薬はウシやブタの膵臓から抽出して作られていることを小耳に挟み,廃棄物に過ぎなかったブタの膵臓を泥状化し,「健康」のラベルを貼り,瓶詰めにしたものであった1)(Box 1).これは,現在でもなお,糖尿病患者の間に密かに出回っているという.
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