JIM臨床画像コレクション
発展途上国での子どもの栄養障害―マラスムスとクワシオルコル
藤村 聡
1
,
越田 有香
2
,
高岸 壽美
3
1京都大学医学部附属病院総合診療部
2滋賀保健研究センター
3日赤和歌山医療センター看護部
pp.80
発行日 2001年1月15日
Published Date 2001/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903175
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私を含め,平成年代に医師国家試験を受けた人なら,公衆衛生の必須知識としてマラスムスやクワシオルコルの病名を知らない人はほとんどいないと思われる.しかし,実際の日本の医療現場で,こうした小児の栄養障害の患者をみることは皆無である.その一方で,ユニセフの調査によると,世界中では毎日4万人の子どもが栄養失調とそれが原因となる疾患で死亡している.これは発展途上国の「多産少死」による急激な人口増加が原因である(本号JIMレポート参照).
マラスムスmarasmus (表紙写真・左)は,PEM (protein-energy malnutrition:蛋白質・エネルギー低栄養状態)のひとつである.長期間の蛋白質・エネルギー両者の不足によって発生するものであり,持続的な消耗状態(wasting),発育障害(stunted growth),筋収縮(atrophy of muscles),皮下脂肪の減少がみられる,同じPEMでクワシオルコルkwashiorkor (表紙写真・右)があるが,こちらはエネルギー摂取がほぼ正常で,蛋白質の量および質が欠乏した時に起こり,マラスムスにはみられない浮腫,脂肪肝による肝臓肥大.知能障害,皮膚炎,毛髪の線条(flag sign)が観察される.
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