法医学からみえる"臨床"
いわゆる"むち打ち症"はいま……―外傷性頸部症候群をめぐる事故―当事者,医師,損保の攻防
高濱 桂一
1
Keiichi Takahama
1
1宮崎医科大学法医学教室
pp.915
発行日 1991年12月15日
Published Date 1991/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900295
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事例:198〇年3月8日 民事事案
小雨のぱらつく夕方6時頃,国道の交叉点で信号待ち停車中の乗用車に,わき見運転の乗用車が時速40キロメートルで追突した.衝突された車を運転していた43歳の主婦は,警察官の現場検証に立ち会っているうちに気分が悪くなり,近くの外科病院で受診してそのまま入院となった.医師の診断名は"頸部捻挫"でその後60日間入院し,更に続いて1年2カ月間(実治療日数280日)の通院治療を余儀なくされた.その間の症状は項頸部痛,両肩部痛,背部痛,腰痛,頭痛,上腕部痛,両手指のしびれ感,嘔気,めまい,両側耳鳴,眼のぼやけ,咽頭異常感,顔面発汗,不眠などきわめて多彩であったが,通院1年2カ月後に主治医はこれ以上の治療効果は望めないとして治療中止を患者に伝えた.一方,診療費の支払い請求を受けた損保会社は詐病であるとして支払いを拒絶して提訴に及び,裁判所から法医学教室に鑑定依頼があった.
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