Derm.'97
ダニとの攻防
畑 康樹
1
1慶應義塾大学皮膚科
pp.177
発行日 1997年4月15日
Published Date 1997/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412902201
- 有料閲覧
- 文献概要
当教室の真菌を扱うようになって早3年が経とうとしている.諸先生方に教わり,真菌の同定,ならびに培養,保存等に従事しているが,ある夏,ダニの大発生にみまわれ,大切な真菌の数多くを失ってしまった.ダニに汚染された真菌は一見しただけで独特の所見を呈し,これを顕微鏡で覗くとおぞましい,おどろおどうしたダニの輩がおいしそうに培地ならびに真菌の上を闊歩しているのが見える.そんなに不潔にしているわけでもないのにと思っていても,これまでこんなにダニにやられたことはないという先生方の視線は痛かった.しかし,ある学会で某教授がその施設でもその年ダニの大発生があり,苦慮しているとのお話をされているのを聞いてほっとしたのを覚えている.
さて,以降我々は 1)スクリュウキャップからシリコン栓に代える,2)恒温器の中を大掃除し,ダニアースを噴霧,3)ダニに汚染された検体をいち早く発見し,始末する,などの対策を練って,ダニ防止に日夜励んでいる.1)により十分な酸素の供給ができなくなり真菌が死んでしまわないか,2)のダニアースの成分(ペルメトリン,サリチル酸フェニル)により真菌が影響を受けないだろうか等の不安はあったものの,現在のところダニの大発生からは免れている.しかし,単発性の発生は臨床材料を扱う点,不可避であり,油断は禁物で,今後もダニとの戦いは当分続きそうである.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.