読者フォーラム
Par avion 海外便り
松村 理司
1
1市立舞鶴市民病院内科
pp.186
発行日 1991年5月15日
Published Date 1991/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900055
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不治の病のインフォームド・コンセント
前号のMartin Raff先生の続き.
「癌のような重症の病を告知された時にどのように患者が振舞うかは,米国と日本とでは随分違うのかもしれません.不治の病に侵されていると宣告されただけで自殺する患者はこちらではまずいません.患者に病気を説明する時,私は決して希望を奪いとらないように注意しています.私自身かなり経験の多いほうなのですが,それはMemorial SloaneKettering Instituteに居たことがあるからですし,また今はHIV陽性と診断された患者に毎日接しているからです.患者への症状説明は,次のようにしています.‘あなたの病は根本的には治らないので,いつか寿命が尽きるでしょう.しかし,あなたの命を意義もあって長らえもさせる手段は数多くあり,新しい治療法もどんどん開発されています.’」
「このようにして患者は事実を知らされます.平均的予後についても,できるだけ希望を奪われないようなやり方で知らされるわけです.説明に際して,糖尿病がよく例に出されます.糖尿病なら大抵の患者がよく知っているからです.糖尿病も不治の病ですが,食事と薬で治療できます.合併症で亡くなることもありますが,かなり長く快適に生き延びることができます.'と言います.私は,AIDS患者にも,`あなたの病気は糖尿病のようなものですが,それよりは現在進行が速いのは事実です.
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