米国ホスピタリストの「無知の知」・17
「ほら男爵」,現る!!
石山 貴章
1
1St. Mary's Health Center, Hospital Medicine Department
pp.982-983
発行日 2013年11月15日
Published Date 2013/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414103039
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『ほら吹き男爵の冒険』という物語がある.これほど有名なのに,なんと,著者は不明なのだそうだ.モデルとなったのは18世紀のドイツ貴族,ミュンヒハウゼン男爵カール・フリドリヒ・ヒエロニュムスという実在の人物.機知に富んだ話術で評判を集めたが,実際には実務面では誠実な人柄で,物語の中にはこの男爵とは無関係のものも多いらしい.それで世界中の人々から「ほら吹き」と呼ばれては,草葉の陰でさぞや嘆いていることと推察する.人ごとながら,不憫な話である.
さて,そんな見も知らぬ男爵に憐憫の情を持っている場合ではない.この哀れな人物の名前を冠した病気が,今回のテーマだ.その名も「ミュンヒハウゼン症候群」.機質的な異常がないにもかかわらず,虚偽の病気たろうとするこの疾患.周囲の同情を引くために病気を装ったり,自傷行為に及んだりするもので,そう,これはまさに「病気」である.
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