連載 当世 問はずがたり
隠すより現る
石黒 達昌
pp.85
発行日 2014年1月1日
Published Date 2014/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101102032
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秘密保護法案が明日にも衆院で強行採決されるという時点で,この原稿を書いています。それにしても,一時であれ,霞が関の官庁に籍を置いた人間の目には,この法案が実に奇妙なものとして映ります。確かに私がいた文部科学省は,国家の中枢からはちょっと距離がありましたが,秘密の管理は杜撰を極めていました。取り扱い注意の印章のあるなしにかかわらず,ゴミ箱に行くときは手で2,3回裂いただけの手シュレッダーでしたし,そもそも,取り扱い注意の基準にしてからが曖昧なものでした。この調子だと,他の省庁でも,掃除夫の恰好をして廊下をうろついていれば,あらかたの情報は手に入るだろうと,容易に想像がつきました。
ところが,今から30年以上前,試験日の早い防衛医大を模試がわりに受けた時には,まったく様相が異なっていました。持ち物検査の後,市ヶ谷の自衛隊基地の正門からいきなりバスに乗せられた受験生たちは,半ば目隠し状態で試験会場まで引き回されたのです。しかも,一次試験に受かると,近所に人物調査の自衛官まで訪れ,大いにビビらされました。といったようなことを勘案すると,この法案が秘密と称しているものが,安全保障のコアな部分だけに限定しているのだろうとは思います。
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