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百日咳豫防の現段階
金子 義德
1
1國立公衆衞生院衞生微生物學部
pp.12-18
発行日 1952年1月15日
Published Date 1952/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200980
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百日咳は重要な小兒傳染病の一つとして殊に臨床家によつて久しく研究されて來ましたが,其の間の數々の研究の結果にも關らず,比較的近年に到るまで殆んど見るべき成果を擧げ得なかつたのであります。一方細菌學の領域に於いても,他に未解決のより實要な傳染病があつた爲か,百日咳菌に關する研究は遲々として進まなかつたのでありますが,1939年P. L. Kendrick1)2)が精細且大規模な野外研究の結果,百日咳ワクチン(以下百ワクとします)の豫防効果を,疑問をさしはさむ餘地なく實證するに及んで,百日咳の研究は豫防醫學的,細菌學的,臨床的に漸く活溌になつて來たのであります。今日吾々が參照する百ワクの豫防効果に關する報告の殆んどは,Kendrick以後のものであります。即ちJ. A. Bell3)4),J. A. Perkins5)其他の野外實驗の報告も,數字に多少の相違はあつても,百ワクの豫防効果に關してはいささかの疑いもなく,殊にJ. A. Bellのそれはヂフテリアトキソイドとの所謂混合ワクチンであり,之が若し極く少數に於いて發生するSterile abscessに對してもつと確實な解決が得られれば,小兒の重要な傳染病の二つであるヂフテリーと百日咳が一擧に解決する事になつて其の恩惠は計り知れないものがあると思われます。吾が國に於いても,已にワクチン製造は軌道にのり,多数に對して豫防接種が行われでいるのは喜ばしい限りであります。
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