特集 この組み合わせに注意!日常診療で陥りやすいpitfall
【総論】
禁忌事項に関する法的問題点
児玉 安司
1,2
1東京大学医療安全管理学講座
2新星総合法律事務所
キーワード:
添付文書
,
禁忌
,
民事訴訟
,
損害賠償
,
刑事手続
,
過失の推定
Keyword:
添付文書
,
禁忌
,
民事訴訟
,
損害賠償
,
刑事手続
,
過失の推定
pp.376-378
発行日 2013年5月15日
Published Date 2013/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102834
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法的に問題となる「禁忌」とは
医療者が禁忌(contraindication)ということばを使う範囲は広い.同じ禁忌ということばを使っているときも,絶対的禁忌から相対的禁忌まで幅があり,さまざまなニュアンスがある.薬剤の添付文書の中で禁忌という表現がなされている場合,診療ガイドラインの中で禁忌という表現がなされている場合,論文等で著者の主張として禁忌という考えが述べられている場合など,禁忌ということばが使われる文脈も多様である.
他方,法的な問題となる範囲は極めて狭い.民事医療訴訟の提訴数は年間数百件程度であり,判決という形で法的な判断が示される事例はその半数にもならない.しかも,その中で薬剤の禁忌が争点となるものは,ごく少数の事例に過ぎない.また,刑事医療事件で有罪の判断に至る事例は,すべての医療事案をあわせても,年間数件にも満たなくなっている.かつて抗がん剤の過量投与が刑事事件となった事例があったが,刑事手続で表面化すること自体が極めて稀である.
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