オバマ政権下の米国プライマリ・ケア事情[8]
疼痛コントロールと鎮痛薬
北野 正躬
pp.628-630
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101981
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痛みに対して今までは,麻薬に対する考え方,扱い方,法律などの為に麻薬はどちらかというと世界的にも控えめに使用されてきました.とくに日本での一人あたりの麻薬の経口使用量は4.7mgと,世界的平均の5.9mgよりはるかに低く,がん患者の意識調査でも疼痛治療を十分に受けていないと59%が不満に思っています1).しかし患者の痛みが社会的な問題として深刻に取り上げられたように,最近,痛みに対するアプローチは変わってきました.西ヨーロッパでは麻薬消費量も増え改善されましたが,麻薬に対する誤解と厳しい規制の東ヨーロッパではがんの痛みに対して“Public Health Catastrophe”(国民健康の悲劇)と言われるほど遅れています2).WHO(世界保健機構)とInternational Narcotic Control Board(国際麻薬調整理事会)も早くからこの問題を取り上げ,末期がんの3割は耐え難い痛みに十分な処置が行われていなかったと警告を発しました.それ以来,麻薬に対する知識も改善され,イタリア,ルーマニアやインドでは国家的レベルでの取り組みも行われるようになりました3).
ここでは生命倫理の観点から,末期医療の痛みのみならず,一般医療での痛みと麻薬の問題にテーマを広げて報告したいと思います.日本でも疼痛専門医がペインクリニックを標榜していますが,米国では麻酔医,精神科医,臨床心理士,理学療法士,ナースプラクティショナーによるチーム医療が普及しています.
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