特集 高齢者の誤嚥
【総論】
高齢者の嚥下機能と誤嚥
山谷 睦雄
1
,
貫和 敏博
2
1東北大学大学院 医学系研究科 先進感染症予防学寄附講座
2東北大学大学院 医学系研究科 内科病態学講座 呼吸器病態学分野
キーワード:
不顕性誤嚥
,
ACE阻害薬
,
嚥下反射
Keyword:
不顕性誤嚥
,
ACE阻害薬
,
嚥下反射
pp.104-108
発行日 2010年2月15日
Published Date 2010/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101847
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Case
大動脈瘤により嚥下障害と肺炎を発症した1例
患者:73歳,男性.
既往歴:脳梗塞,認知症.
現病歴:1年前から歩行困難と高血圧にて近医で加療していたが,治療を中断していた.1カ月前に歩行困難と頻脈にて近医を再び受診.38℃の発熱があり,肺炎として加療していた.その後,食欲不振と嚥下困難を訴えていた.3日間の発熱と食事の際の「むせ込み」を主訴に紹介された.
考察:本症例は食事の際の「むせ込み」を訴え,嚥下障害による肺炎を疑った.脳梗塞の既往もあり,脳梗塞が原因で嚥下機能障害をきたしたと当初は予想した.しかし,胸部単純X線像で胸部大動脈瘤の存在と動脈瘤の急激な拡大があった.このため,大動脈瘤の圧迫に伴う反回神経麻痺が声門機能を低下させ,肺炎を発症したと判断した.高齢者の嚥下機能低下は脳梗塞以外にも,本症例のように反回神経麻痺も考慮する必要がある.反回神経麻痺による誤嚥性肺炎は,全身麻酔などの気管内挿管や肺癌・食道癌の症例でも生じる.
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