特集 高齢者の誤嚥
【総論】
嚥下のメカニズムと誤嚥の画像診断
金丸 晶子
1
1東京都健康長寿医療センターリハビリテーション科
キーワード:
咽頭
,
空気道
,
栄養道
,
プロセスモデル
,
VF
,
VE
Keyword:
咽頭
,
空気道
,
栄養道
,
プロセスモデル
,
VF
,
VE
pp.98-103
発行日 2010年2月15日
Published Date 2010/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101846
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嚥下に関わる器官の解剖
嚥下に関係する器官を考える場合,咽頭を中心に置いて,それを取り巻く鼻腔・喉頭(空気の通り道:空気道)と口腔・食道(食べ物・水分の通り道:栄養道)にわけて考えると,位置関係が把握しやすい(図1).咽頭は,空気道と栄養道の交差点であり,その振り分けを自動的に行っているのである.自動的の意味は,振り分け作業が反射的に行われ,意識的にコントロールできないということである.嚥下機構と気道のいずれもが咽頭腔を使用するため,時間を上手にずらして使用しないとケンカとなる.それが,誤嚥である.
では,咽頭の形はどのようになっているのであろう.咽頭そのものには,はっきりと輪郭のある骨や軟骨などの骨格構造がなく,周辺の骨に固定された線維組織および筋肉で形成されている.たとえば,舌骨には9対の筋が付着し咽頭の前方支持に関わっている.咽頭の筒状形態を構成している主なものは,咽頭頭底筋膜である.それは頭蓋底からぶら下がるU字型の構造体で4つの欠損部を有し,上方の鼻咽頭峡部,前方の口腔咽頭峡部と喉頭室,下方の咽頭食道接合部である1).欠損部の周辺には複雑な括約筋スリング(sphincter muscular sling)が発達し,嚥下過程で必要な時に欠損部を閉じる.咽頭の筋は咽頭内の圧を調節し,食塊や空気の動きに絡んでいる1).
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