特集 診療現場での倫理 Case Study
【Case Study】
本人に嘘をついてでも化学療法を続けてほしいという家族のケース
佐野 広美
1
,
森本 慎吾
1
,
白山 才人
1
,
三浦 靖彦
1
1医療法人財団 慈生会 野村病院
pp.672-674
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101762
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Case
患者は80代,女性,若くして夫と長男を亡くし,独身の一人息子と同居している.
X年4月他院で大腸がん(stageⅢa)の手術を受けた.同年7月腸閉塞のため当院を受診,腹膜播種による消化管閉塞の診断で8月に手術,閉塞部を切除したが腹腔内に多発する播種病巣が遺残した.病状告知のうえ,9月より外来にてフルオロウラシル・レボホリナートによる化学療法を開始した.12月,2クール終了時点でCEAが650ng/mlから353ng/mlまで低下し治療が奏功していると思われたが,副作用の悪心が辛いこと,知人に「抗がん剤で免疫力が下がる」といわれたことなどを理由に3クール目の開始を拒否した.しかし「どんなにお金がかかる方法でもいいから,一人息子のために少しでも長生きしたい」とも話している.息子は日常から非常によく患者の世話をしている.外来通院にて経過観察中のX+1年4月頃より腹痛・下痢・嘔吐などイレウス症状を繰り返すようになり,症状コントロール目的で入院となった.画像診断で腹腔内に腹膜播種によると思われる多発結節を認め,CEAも1,060ng/mlと再度上昇していた.単に症状コントロールでは3カ月程度の余命であることを告知し化学療法再開を提案したが,やはり本人は治療を拒否した.その後,息子より「本人に嘘をついてでもいいので化学療法を再開してほしい」との申し出があった.
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