特集 診療現場での倫理 Case Study
【Case Study】
本人に意思決定能力がなく,本人とは関係のない信仰により標準的医療が受けられないケース
大門 伸吾
1,2,3
,
宮田 靖志
4
1北海道プライマリ・ケアネットワーク“ニポポ”
2公立芽室病院
3我妻病院
4札幌医科大学地域医療総合医学講座
pp.668-670
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101761
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Case
患者:94歳,男性.息子夫婦と同居中.元来つたい歩きが可能な程度の歩行能力はあった.自宅にて転倒し歩行不能となったが,受傷4日後に長男の嫁とともに当院整形外科受診した.左大腿骨転子部骨折と診断され入院し,手術の術前評価目的のため,内科紹介受診となった.
血液検査でヘモグロビン5.9g/dlの貧血を認めた.患者は全身状態が悪く認知症もあり,意思決定能力には乏しいと思われる状態であったため,付き添っていた長男の嫁に輸血の同意を得るための説明を行った.しかし,長男の嫁のみが信仰している宗教上の理由のため同意は得られなかった.輸血は望まないものの,手術の希望はあった.
整形外科では輸血なしでの手術は不可能と説明されたため,長男の嫁は他院にセカンドオピニオンを求めたが,やはり同様に輸血なしでの手術は困難との説明しか得ることはできなかった.
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