- 有料閲覧
- 文献概要
四半世紀以上前,私たちの時代は現在のようなマッチング制度,初期研修医制度とは異なり,国家試験合格後すぐに自分の希望の医局に所属し,専門医を目指しました.そのため,国家試験の勉強をしながら,自分の将来を思い描き,何科に入局するか? を考え,友人と夢を語ることもありました.そんな会話の中に,「医者は自分の専門の病気で死ぬんだって」「じゃあ,がんは嫌だから,何科の入局がいいのかな?」というような,嘘か誠か都市伝説的な内容がありました.“医者は自分の専門とする疾患で死ぬ”,この都市伝説は後輩医師も知っておりました.そして,とある医師のお葬式に参列した際に,「死因は脳の動脈硬化だろ,医者はやはり自分の専門分野で死ぬんだな」「そうだな,俺らも気をつけよう」という会話が聞こえてきました.何気なく聞こえたこの会話に,ぼーっとしながら「この話,医者あるあるなのね」とフワフワ考えていたことを覚えています.
死因はさておき,自分の死因を考えて決定したわけではありませんが,結局私は神経内科に入局し,神経内科専門医となり,現在は神経筋電気診断学(針筋電図・神経伝導検査をはじめとする電気生理学的手法を用いて神経筋疾患の診断をする分野)を専門としております.そのため,必然的に筋電図を行う機会が増えました.そんな中,いつの日か左肩背部付近の鈍い痛みが出るようになり,「これが噂の五十肩なのか」と訪れた体の劣化にガックリしていると,そのうち左手肩から親指側のしびれ(ピリピリした感じ)を自覚するようになりました.私の自己診断では,一連の症状は五十肩ではなくC6頸椎症.C6支配筋は円回内筋(PT)なので,日常生活における筋力低下の自覚はなし.ただ,園生先生の診察では「PT弱いよ(笑)」だそうです.ここで一句,“わたしにも,とうとう来たか,頸椎症”.なぜ「とうとう来たか」というと,私は,週1回半日,帝京大学の神経筋電気診断センターの前センター長である園生雅弘先生の筋電図外来に通い,神経筋電気診断学を学んでおります.そこにはたくさんの筋電図仲間がいて,検査後は筋電図談義に花が咲くことしばしばです.特に,筋電図外来で診察するcommon diseaseの症状が自分自身にあるかないか? が話題になることは多く,そうすると頸椎症症状のある人が多数発覚し,いつの日かわれわれの間で,“筋電図をやる人は頸椎症になる人が多い”という都市伝説ができました.そう,筋電図をやる人に多い疾患である頸椎症が,とうとう私に来たのです.筋電図に認められたと思えば喜ばしいことではありますが,正直,嬉しいとは思えず,われわれの間にある都市伝説“筋電図をやる人には頸椎症が多い”が本当かどうかを検証してみたくなりました.そこで,アンケート調査を行いました.
Copyright © 2025, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.