Editorial
汝の敵を知れ
松村 真司
1
1松村医院
pp.407
発行日 2009年6月15日
Published Date 2009/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101698
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蚊柱,かげろう,蛍,赤とんぼ,秋の虫.古来より自然と調和する生活になじんできた私たちは,月や星,山や川,草花と同じように虫というものを愛でてきたのだろう.明治時代に,この事実に西洋人の視点から気づいたラフカディオ・ハーンは,日本人が秋の虫の音をいかに愛しているかを随筆に残している.ハーンは,日本人が虫をかごに入れて商売にまでしていることに感嘆しているが,最近は,縁日でもスズムシなどの秋の虫を虫かごに入れて売っているのをとんと見かけなくなった.私たちの虫に対する思い入れも,時代とともに変遷しているのかもしれない.
とはいえ,蚊・ハチによる虫刺症,毛虫皮膚炎などを筆頭にして,これらの「虫」による健康被害はプライマリ・ケア医であれば日常的に経験する.ここで私は「虫」,と括弧をつけて表記したが,ご承知のようにムカデ・クモ・ダニは昆虫とは全く違うジャンルの生き物である.ただ,これらもしばしば「虫」と一般に呼ばれ,プライマリ・ケア医が頭を悩ませるもの,ということから,大雑把なくくりで特集を組んでみた.ご専門の先生からはお叱りを受けると思うが,プライマリ・ケア医向け,ということで何とかお許しをいただければ,と考えている.本特集では,さまざまな視点から「虫」をめぐる諸問題を取り上げた.とくに,在宅医療における昆虫対策に関する矢口先生のご論文はプライマリ・ケア医にとって大変示唆に富む論文であるので,ぜひご一読いただきたい.
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