連載 りれー随筆・212
Heal Tyself—汝自身を癒せ
杉本 亜紀
1
1明石市立市民病院
pp.610-611
発行日 2002年7月25日
Published Date 2002/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902917
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
綱渡りの育児
先日,1人息子が小学校に入学した。思い起こせば6年前,保育所の門をくぐった時から親子の奮闘記が始まった。泣きべそをかいている息子の姿を尻目に,後ろ髪ひかれる思いで職場へと急ぐ私。それからというもの,夫をはじめ双方の祖父母・妹・友人を総動員して,まさに綱渡りのような育児をしてきた。
男の子のためか(?)2歳ぐらいまでは,よく熱を出し,その度にあっちのお家,こっちのお家とたらいまわし状態であった。当の息子はそのせいか,誰にでも愛想が良くなってしまった。「綱渡りの育児」。近年働く母親が増えたからといえ,今般の育児事情はさして変わっていない。保育所は元より親兄弟,じじばば,友人までも動員しなければ仕事を続けられない。この現状が改善されない限り,日本の労働人口は増えないだろうし,子供も増えないだろう。助産師の仕事は商売あがったりである。慢性的な保育所不足で,働きたくても働けない人,やっとの思いで就職しても周囲のバック・アップが得られず,結局仕事を辞めてしまった人。私の友人たちにもそういう人は一杯いる。そんな中で今にも息切れしそうになりながら仕事を続けている私は,やっぱり恵まれていると思う。
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.