連載 続・白衣のポケット・19
女の敵
志水 夕里
pp.560
発行日 2002年7月10日
Published Date 2002/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901673
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ここ数年,自分の職場に妊娠中のスタッフがいることが続いた。妊娠による循環血液量の増加は,心負荷となり,すぐに息切れを起こす。日々,大きくなっていくお腹は,下に置いてある物を取れなくする。つわりで通勤電車にも乗れない。体調の微妙な変化も多い。改めて,肉体労働をしながら,女性として生きていくことの大変さを目の当たりにする。
「重い物を持たない」「睡眠をとる」「リラックスした生活」と,妊娠中に指導されるこれらのことは,ハッキリ言って無理。看護の仕事たる生活の援助とは,なんと重労働が多いことか。他のスタッフが,その分を引き受けるとしても,それはそれで「皆の足手まといになっている」という気持ちの負担になってしまう。立ち仕事は,やはり子宮収縮につながるので,お腹をさすりながら勤務している姿もよく見かける。「少し横になって」と言うくらいしかいたわれなくて,こちらも心苦しい。実際,ナースの切迫流産・早産の確率は高いように思う。産科で働いていたとき,切迫で入院してくるナースもいたし,収縮抑制剤を使いながら働いていたナースがいたのも知っている。それが決して望ましい状態ではないのだ。
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