特集 医師に必要な臨床栄養学
【トピックス】
疾患の結果として生じる栄養障害
中屋 豊
1
1徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 代謝栄養学
キーワード:
栄養不良
,
慢性閉塞性肺疾患
,
心不全
,
腎不全
,
肝硬変
Keyword:
栄養不良
,
慢性閉塞性肺疾患
,
心不全
,
腎不全
,
肝硬変
pp.920-923
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101548
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Case
ビタミンB1の投与が有効であった重症の心不全を繰り返した1例
患者:65歳,男性.
現病歴:心筋梗塞,心房細動があり,フロセミド40mg,スピロノラクトン50mg,メチルジゴキシン0.05mgを投与中であった.心不全の増悪のため,呼吸困難,下腿の浮腫,胸水の貯留を認め入退院を繰り返していた.食事の摂取量が少なく,おかずはほとんどとらず,米飯がほとんどであった.ビタミンB1濃度1.8μg/dl(基準値2.0~7.2μg/dl)と低値を示した.食事摂取が少なく,また利尿薬により微量栄養素の喪失(とくにビタミンB1)が考えられ,ビタメジン3cap/日を投与した.その後,心不全の増悪はみられず,BNPは1,000ng以上を示していたものが,300ng/ml程度に低下し,浮腫,胸水も出現しなくなった.
この例では,もともとビタミンB1の少ない精製された米飯中心で食事量が少ないうえに,利尿薬により水溶性のビタミンB1が排泄され,欠乏症を起こし,心不全を悪化させたと考えられた.心不全のビタミン欠乏症はわが国では注目されていないが,海外では多くの研究がある.なお,本例では血中のビタミンB1は低値を示していたが,血清値は鋭敏な検査ではなく,血清値が低くなくても,利尿薬を使用している例ではビタミンB1の欠乏症の可能性を考えるべきである.
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