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Q1 判断能力の評価プロセスにおいて,重要なことは何でしょうか.
A1 判断能力は,意思決定能力,または治療同意判断能力ともいわれる.判断能力の評価プロセスにおいて重要なことは,判断能力評価の中核として挙げられる4つの機能上の能力*1),「選択を表明する能力」「治療の意思決定に関連する情報を理解できる能力」「自分自身の状況,とくに,自分の病気とその治療を選択した場合に起こりうる結果に関する情報の重要性を認識する能力」「関連情報をもとに論理的な過程で治療の選択を比較考察するような,論理的に考える能力」を直接的に観察することである.その際,以下の項目*2)を確認するとよい.
◯患者は,医療従事者や家族の強制ではなく自分自身で選択している.
◯患者は,自分の意思決定の内容を他者に伝達することができる.
◯患者は,医学的状況と予後,医師が勧める治療の本質・内容,他の選択肢,それぞれの選択肢の危険と利益についての情報を理解できる.
◯患者は,選択した治療が行われた場合,どのような結果になる可能性が高いかを推論できる.
◯患者は,治療を拒否したり中断したりすることができることを理解できる.
◯患者は,拒否や中断によって治療が行われなかった場合,どのような結果になるのかを(自分の身の上に生起することとして)理解している.
◯患者の決断が一時的(朝令暮改または日替わり)でなく安定している(ただし急激な変化は疑うべきだが,穏やかな筋の通った変化は評価すべきである).
◯患者の意思決定が,患者の今まで表明してきた価値観や医療や人生における目的(価値観)と矛盾していない.
◯患者の意思決定は妄想や幻覚,うつ状態に基づいたものでない.
*1)Grisso T,et al.1998/北村總子,他(訳):治療に同意する能力を測定する.日本評論社,2000.
*2)浅井篤,他(編):適切な手続きのための臨床倫理チェックリスト.厚生労働科学研究費補助金「脆弱高齢者・終末期患者への診療に関する判断,および診療行為の質の評価と改善に関する研究」平成18年度報告書,2007.
(佐藤由佳・他→p648)
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