シネマ解題 映画は楽しい考える糧[7]
「スパイダーマン」「スパイダーマン2」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野
pp.75
発行日 2008年1月15日
Published Date 2008/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101331
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どこまで自己犠牲を払って働くべきか?
今回は『JIM』読者の皆さんもご存知の大ヒットアクション映画,『スパイダーマン』とその続編を取り上げます.主人公はパッとしない高校3年生のピーター.幼馴染のMJにも思いを伝えられず,親友に彼女を取られてしまいます.そんな彼がある日突然,遺伝子組み換えを行った蜘蛛に噛まれて超人となり,ニューヨークに出没する悪を退治するようになります.私が本シリーズを紹介するのは,この種の映画が大好きということもありますが,私の専門領域に関わる諸問題が大きなテーマになっているからです.この2作品は,見方を変えれば「ピーター・パーカーの個人生活と“ヒーロー・ライフ”の両立苦労物語」と呼ぶことができるでしょう.注目すべきキーワードは,劇中でも何度も語られ,本シリーズのキャッチフレーズにもなっている「大いなる力には大いなる責任が伴う」ではないでしょうか.
このフレーズ,カッコいいですよね.しかし最初に聞いた時から,素直でない私は「ほんまかいな?」と思ってしまったのです.第一作の最後のナレーションでも流れるように,ピーターの力は「ギフト」であり「呪い」です.彼はたまたま蜘蛛に噛まれて超人になりますが,これは明らかに事故ですね.彼が自ら進んで得た力でも能力でもないのです.ニューヨークの市民を助けることはとても良いことで大いに賞賛されることなのですが,これは彼の人間(蜘蛛人間?)としての義務でしょうか.力があるという事実から,それを使って人命救助するという義務が,自動的に導き出されるのでしょうか.
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