連載 Clinical Ethics—臨床倫理について考える・3
臨床倫理とは何か(その2)
浅井 篤
1
,
福井 次矢
1
1京都大学医学部附属病院総合診療部
pp.258-261
発行日 1998年3月1日
Published Date 1998/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905549
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わが国にクリニカル・エシックスは必要か?
米国の倫理学者バーナード・ローは,クリニカル・エシックス(臨床倫理)に対する一般の医療従事者の懐疑的な態度について言及し,良い人間であれば倫理を学ぶ必要はない,医療従事者として働き始めるまでには人々の倫理観は定まっており,倫理の教育をしても意味がない,すべてのケースがそれぞれユニークであり倫理的ガイドラインは実用できない,などの例をあげている1).ローはこれらに対して,クリニカル・エシックスの教育によって,倫理観が欠如した医療従事者も倫理的に行動させることができ,かつ,いままでの人生で経験したことがない倫理的選択の可能性を知ることができること,非常に思いやりがあり有能であるというだけでは,延命治療を中断すべきか否か,いかにDNRオーダー(心肺停止時に心肺蘇生術をしないという指示)の説明を患者にすべきか,などの問題に答えが出せないこと,倫理的に重要と考えられる状況が同一であれば,個々の症例でも一貫した倫理的判断が必要であること,などをあげクリニカル・エシックスの意義を再確認している.
これらの一般的な懐疑的態度に加え,わが国でクリニカル・エシックスを実践,教育するにあたって問題となる懐疑的態度としては以下のものがあると考えられる.
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